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Personal 724 views May 10, 2020
選んだ人生はそれぞれ異なるけれど、皆一生懸命生きているのだ

選んだ人生はそれぞれ異なるけれど、皆一生懸命生きているのだ。「実はさ、私も今婚約中なんだ!見て、指輪もらっちゃった」一人の友人が、左手の薬指を誇らしげに皆に見せた。それを見て、独身の子たちは羨ましいと口にする。「依織と蘭は?今は彼氏いるの?そういえば依織は、専門卒業してすぐに年下の子と付き合ったよね」ここにいる蘭以外の皆は、私と遥希がとっくに別れていることを知らない。「あー……実は、遥希とは春頃に別れたんだ」「え、そうなの!?」皆が驚く中、蘭は身を乗り出し甲斐のことについて喋り始めた。「でも今は、別の男と付き合ってるからね。その男がうちらの同僚なんだけどさ、もうラブラブで見てられないのよ」「ちょ、適当なこと言わないでよ」「あんた気付いてないの?甲斐といるとき、顔ふにゃふにゃになってるから」「ふ、ふにゃふにゃって……」思わず自分の顔を手で隠す。甲斐といると、つい安心してしまい頬が勝手に緩んでしまうのだろう。「新しい彼氏とラブラブなら、結果オーライじゃん。彼氏、何歳なの?」「私たちと同じ歳だよ」「じゃあ、結婚も考えてるんだ?」「結婚、ね……」まだ漠然としているけれど、以前より結婚という単語の響きに嫌悪感を覚えなくなってきている自分がいる。それはきっと、甲斐と過ごす毎日の中で自然と結婚を意識し始めているからなのだろう。曖昧に言葉を濁した私を見て何か気付いたのか、company incorporationてから隣の席にいる蘭がこっそり耳打ちしてきた。「ねぇ、依織って結婚願望ないの?」「……普通よりは、ない方かな」「ふーん。まぁ、価値観は人それぞれだしね」「でも……少しずつ、変わってきてるような……気もする」甲斐と付き合い始めてから、結婚の話になったことは一度もない。同棲さえ、まだ遥希のことがトラウマになっていて、提案する気になれていないのが本音だ。口には出していないけれど、きっと甲斐は私の本音をわかっていて、その上で私の気持ちを尊重してくれているのだと思う。でも甲斐は優しい人だから、本当は自分の気持ちを押し殺しているのかもしれない。「でも付き合い始めて一年も経ってないしね。六年付き合った男と結婚を考えられなかったのに、次の男とは結婚したいなんてそんな簡単に気持ちが変わるわけないか」「……そうだよね」月日が経つにつれ、いつかこの壁にぶつかることはわかっていた。けれど、そんな簡単に自分の価値観を変えられないこともわかっている。ただ、私はこの先もずっと甲斐のそばにいたい。そのためには、どうすればいいのか。それをゆっくり考えていく時間が必要なのだと思う。「そういえば話変わるけどさ、医療事務の小悪魔女子いるじゃん?小泉沙羅だっけ」「あぁ、うん。あの可愛い子がどうかしたの?」蘭から彼女の名前を聞いた瞬間、イブの日に廊下ですれ違い少しだけ会話をしたことを思い出した。「あの子最近彼氏と別れたらしくてさ」「そうなの?」「で、その別れた理由が他に好きな人が出来たからなんだって」「へぇ、そうなんだ」小泉さんに彼氏がいたことさえ知らない私は、目の前に置かれたフレンチの前菜に夢中になっていた。自分が噂話で嫌な思いをしてきたから、人の噂話をするのはあまり好きではない。適当に聞き流そうと思いながら前菜を口に運んでいたけれど、次の蘭の発言を聞いて動きが止まった。「で、その好きな人っていうのが、どうやら甲斐らしいのよ」「……何で?」「さぁ。ほら、甲斐って顔広いでしょ。あの子とも前から接点があったんじゃない?」「……そう、なんだ……」さすがに聞き流せない話になってしまった。うまく食事が喉を通らない。